さて、建替え委員長としてではなく、賃貸物件としている区分所有者としての苦難の話です。
BONBON家では、このマンションのうち2軒所有しており、どちらも賃貸物件にしておりました。
建て替えが決定しましたので、賃借人には、退去してもらえるようにお願いしないといけません。
この2軒の入居者の方の対応が、真逆で実に対照的でありました。
賃貸をしている区分所有者は、どうしたらいいかについても、コンサルタントからアドバイスを受けております。
建て替え決定したとしても、なんやかんや決めていくこともありますから、建物が解体されるのは1年先です。
その間に、引っ越し先、戻ってくる人は仮住まい先などを探して決めて、不要家財を処分して、部屋を空にして、引越ししていきます。
まあまあ、時間的余裕はあります。あるかな? あるようなないような。
コンサルタントによると、賃借人には、原状復帰義務の免除は当たり前として、残り期間の家賃も免除するのが一般的だとのお話でした。むこう4年~5年、家賃収入が減るのは痛いなあとおもいますが、しょうがありません。
賃借人Aさんは、シングルマザーの方でした。
正式に、建て替え決定を知らされたのは初めてですが、周りの雰囲気や井戸端会議から、建て替え話が進んでいることは、とっくに知っておられました。
どうなるんかなーと不安だったようですが、時期をお伝えして、それまでお家賃は免除しますと伝えると、喜んで同意してくれました。
けっこう別嬪さんで、お話するのも楽しかったです。
明け渡し期日のわりとギリギリまでおられましたが、気遣い無用だと言っていたのに、明け渡しの時は、きれいに掃除までしてくれていて、おお、このまま貸せるやん!という状態でした。解体されるのがもったいない。
人柄が表れますねえ。
賃借人Bさんは、わりと若いご夫婦で、根暗そうな旦那と、旦那を後ろから操っていそうなイケズな顔をした奥様でした。
「突然そんなことを言われても!」と責められまして、いや、知っとったやろ、それに一年先のことなんやから突然でもないし…と思いつつ、すみません、お家賃はこの先けっこうですといったところ、「そんなのは当然です! それより立退料はなんぼ出すんですか!」と、逆襲してこられました。
実は契約書には「建て替え等のやむを得ない事情がある場合は、立退料などを請求しない」との特約事項が記載されていたのですが、「そんなのは無効!判例がある!」と突っぱねてこられました。
実は「建替えは大家の都合なのだから、やむを得ない事情には当たらない」とされた話は、コンサルに聞いて知っていたのですけど、Bさん、よく知っていたなあ~。突然聞かされたにしては、手回しのええこっちゃ。
誠意ある金額を提示せんことには、同意書にサインはしまへんで!とすごまれ、なんどもなんども交渉して、結局100万円超の立退料を出すことになりました。交渉に当たるのは、実に嫌な気分でありました。
1年経って明け渡された物件は、品の悪い変なガラの壁紙がビリビリになっていて、襖もビリビリで、畳はフニャフニャで、シールやら落書きがあっちこっちで、なんか臭くて、ゴキブリの毒エサがあっちこっちに置いてあって、押し入れからは怖いお面とか、くしゃくしゃに丸まったシャツとかでてきて、これ、普通やったら、弁償金と残置物処分代、こっちが請求するで!と思った次第です。
ボロボロ物件に、家賃値下げ交渉もせずに(実際は値下げしていた)、長年住んでたんですよ!と、のたまわっておられましたが、ボロボロにしたの、あんたらやんか!
病気で通院に困るとか言ってたけど、それはあんたらの人柄のせいや!
新築物件に入居申し込みしてきても、絶対入れてやらん!
ところで、建替えによる賃借人退去についてですが、これからの世の中、こんな事例が増えてくるのですから、建替えを円滑に進めるためにも、なにか法改正とかするべきじゃないのかなあ、と思った次第であります。
(※ この物語はフィクションであり、心当たりがある人がおられても無関係です)