格安物件の落とし穴

前に書きましたが、私が実家の大家業に係るようになったのは、この5年くらいのことです。それまでは、介護事業所を経営しておりました。

その、介護サービス事業所を経営していた時ですが、実家の仕事と関係なく、すでに大家もどきの仕事をしてました。しかも、ボランティアで。

事務所のすぐ横に、古いボロボロの長屋がありまして、トラブルがあるたびに呼び出されていたのです。長屋の住人の中に、うちのホームヘルパーサービスのお客様が何人かおられまして、電球が切れたとか蛇口の水が止まらないとか、緊急事態をヘルパーに頼むんですね。

ヘルパーじゃ手におえなくて、隣りにいる社長に言ってくると。

ちなみにそんな仕事は介護保険サービスの対象ではありません。

(大家の仕事でもないような気もしますが。)

古い木造長屋のトラブル

普通なら冷たく断るんですが、なにしろ事務所がすぐ横です。ホームヘルパーのおば様たちは、事務所の方に振ってくるんですよ。社長っても、息子くらいの年齢でしたから、いいやすかったんでしょうね。

電球が切れているとか、ガスコンロが点火しないなんてのは、タマとか電池を交換すればいいだけの話ですが…

テレビがつかなくなった、テレビが消えなくなった、ドアがあかない、水道が水漏れしている、2階から水漏れしてきた!トイレが詰まって逆流してきた!天井がはがれてきた!コンクリートブロックが落ちてきた!猫が入ってくる!猫が生まれてる!猫が死んでる!隣のオバハンが猫に餌やってる!隣のおっさんがうるさい!

・・・と、どんどんエスカレートしてくるんです。

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ちなみにテレビがつかないというのは、なんてことのないアンテナの故障でした。

テレビが消えないというのは、テレビのスイッチを切っても音が鳴り続けているというオカルトチックな話でしたが、駆けつけてみると、テレビの横でラジオが鳴ってました。

ボケてる老人も多かったです。

トイレづまりのトラブル

トイレ逆流は、まさに緊急事態で、ウンチがあふれてきて、本当に大変でした。配管の詰まりを、手近にあった塩ビのパイプでつっついて流したんですが、まあ、無傷では済まないです。(ウンチにまみれます)

建物自体が歪んでいて、配管の傾斜がおかしくなっているような感じでした。これはもう素人じゃ手におえませんので、町内の大工さんを呼び出して手入れしてもらいました。

野良猫のトラブル

猫絡みでは、市の動物指導センターに、ずいぶん足を運びました。

子猫が放置されていたり、死んでいたりすることは多かったです。

原則として、生きている猫は引き取ってくれないですが、あまりに子猫で、生存の可能性が低いと判断されると、引き取ってくれます。引取後どうなるのかは聞きませんでしたが、センターには、でっかい慰霊碑がありました。

また、餌付けも問題です。これは住民同士のトラブルになりますね。

大家も放置

なんでもかんでも、こっちに言ってこないで、大家さんに言ってくださいよ、というんですが、大家さんは、神戸にいる年寄りで、現場にやってくる事は全く無く、管理を請け負っている不動産屋も年寄りで、電話をかけても出てこないし、ぜんぜん頼りにならんと。

そんな大家にも管理会社にも見放されたような長屋を、私が面倒見る義理は全然ないんですが、ホームヘルプの業務に差し支えるため、つい手助けしたのが運の尽きでありました。

とうとう、お客でもない他の住人たちからまで、当てにされるようになった次第です。おかげで長屋中の住人がお客になってくれたのは、良かったですけど。

近所の、隠居している大工のおじいさんには、ずいぶんタダ働きをさせてしまい、申し訳なかったです。

ボロ長屋のオーナーチェンジ

そんなオンボロ長屋ですが、あるときオーナーチェンジがありました。

あまりにトラブルが頻発するし、修繕もしきれず、前オーナーが耐え切れなくなって売却したのでしょう。

8戸の連棟が2棟、あわせて16戸が、500万円で売買されたと聞きました。ボロとはいえ、駅近の町中ですし、超格安です。

家賃4万円なので、年間収益は768万円。単純に計算したら、表面利回り、153%です。超高収益物件ですね!

しかし、私が不動産投資を始めていたとしても、中身を知っているだけに、この長屋を買うというのは、ためらうなあ。

工務店が買った格安物件

新オーナーは、工務店をやっている不動産屋でした。やはり素人ではなかったです。

すぐに大工事にとりかかり、空いている部屋は、壁から床からひっぺがし、トイレも洋式にして、2階にはなかった風呂も、無理やり備え付けてました。

隣接するうちの事務所の壁のトタン板まで新品に替えてくれましたけど、よく見ていたら、相当なやっつけ仕事でありました。

まあ、コストは掛けたくないですものねえ。

素人が手を出すべきでない物件

長屋の前の通路を、きれいにコンクリートで固めたのはいいですが、ナナメになっていたようで、雨水が玄関に入ってきてました。とうぜん住民からはクレームです。

錆びて腐っていた階段も、上からペンキを塗ってごまかしているだけで、そのうち崩れて死人が出るんじゃないかと。

住民も大幅に入れ替わり、長期滞納だった長屋のヌシは、裁判沙汰になり追い出されました。

新たな住人は、安定の生活保護世帯で固めているみたいです。中近東あたりの外国人家族も入ってきて国際色豊かになりました。

水道の故障や猫で呼び出されることはなくなりましたが、うちの事務所に夜中に自転車を貸してくれといってくる人とか、中庭にゴミを放り込む人とか、警察に連れて行かれる人とか、住人の質は向上しませんでしたね。空き室を埋めるために節操なく募集したんでしょう。

なにしろ、新オーナーである工務店の社長は強引な人で、やっつけ仕事のリフォームと、めんどくさい店子は追い出し、みたいなかんじで、そのくらいのガッツがなければ、こういった物件は扱えないのでしょう。

前オーナーとの値段交渉も、かなり無茶を言ったんじゃないでしょうか。

しかし、あまりのボロさと、住人との戦いに、けっこう、精神消耗していたみたいで、疲れた顔をしておりました。500万円で揉め事を買ったようなもんです。

いくら利回りが良かろうと、私にはとても手を出せない物件です。

ということで、あまりに格安物件は、ご注意、という話でありました。

最初の苦労を乗り切って、うまく回るようにできれば、それも良し、とも思いますけど、かなり根性は必要です。